ねぇさん、事件です。
昨日ね、まのすと酔いどれ、テクテクと麻布十番駅までの道のりにこんなことがありました。
「なぁああにこれぇぇ!!!」
麻布十番の商店街をごきげんで歩く2人の耳に、怒髪天を衝く声が飛び込んできた。
声は、ほど近い右前方から聞こえた。
恐る恐る足をすすめた私たちの目に飛び込んできたのは、階段の中腹に座る男と女。
30代前半のおかっぱの女、友人か、もしかしたら恋仲であろうかと思われるスーツ姿の男。
(あぁ、なんだ。酔っぱらいか)
そう思いながら女をよくよく見た私は、目を疑った。
膝の上に乗せられたカバンの上に大量のマカロニサラダが乗っていたのだ。
左手にも被害が及び、商店街の薄暗い照明にマヨネーズ白色が気味悪く、そして空しく光っていた。
「なにこれ...」
先ほどとは違い、怒りを押し殺したような声で女はつぶやいた。
男は無言を貫いているが、男は無傷であった。
見てはいけないものを見てしまったような気がした。
昨日行ったハバナムーンのマカロニサラダを食べようとはしたが止めたことも思い出した。
私は、マカロニ事件を背にして、隣にいた正子と駅へ向かった
「そりゃ、なにこれだよね。マカロニサラダのってたよね...」
『のってた...』
「男、無言貫いてたね」
『あの男がやったのかな』
「でも、あの男の手には何もなかったよ。汚れてもなかった」
『上から降ってきたのかな』
「確かに。お店を出た時からマカロニサラダを付けてたら、重力でマカロニサラダは下に落ちているはずだから。あんだけ大量にかばんの上にのってたってことはあの階段であったことになるよね。やっぱ降ってきたのかな」
『それか、あの男か。』
「あの男無言だったね」
『うん...』
そうこうしているうちに、4番出口のエスカレーターの前まで来てしまった。
エスカレーターに吸い込まれていく正子を見送り、私は1人になった。
(なんでマカロニサラダが...)
見上げると、東京タワーがぼぅっと光っていた。
続く(わけない)