バリ紀行 29日朝のにおい編
高揚した気分からか目覚ましよりも先に目が覚めてしまった。シャワーを浴び、ベランダにでる。
「本当にバリに来たんだ。」
実感をにおいと肌にはりつく湿気った風から感じる。庭を掃除するほうきの音が清々しい。
すぐに私は散歩に出かけた。
生活のにおい。ココナッツオイル、煙草、香り立つ香辛料や食材。それらの豊かな香りに、犬や家畜の体臭、生ゴミの腐敗臭も混じる。
清濁混ざり合った営みのにおいにかぶさって、自然の陽や雨風をたっぷり含んた土がさらににおい立つ。
生と死をにおいから感じた。
自然も動物も植物も、ありとあらゆるものが時間とともに生まれそして朽ちていく循環。
東京の、無機質な空気に慣れてしまった身体には、バリのにおいが伝えてくる大きくつながった濃密な生命力は圧倒的だった。