水
Elitsa & Stoyan - Water
水の中では魚と水と別物でない。
ほとんど水の一部として、水の変様態として存在する。
たとえば海の中で細長いカマスの群れをみると、
魚という実体が集まって泳いでいるというより
海水に等間隔に刻まれた透明なスリットパターンが
ゆっくりと移ろっていくように見える。
透明な海水のパターンが、一時的に魚の群れを演じている。
水は魚の形をまとってはいるが、魚になりきってはいない。
あらゆるものを「水の変様態」として据えることができる。
樹木も人も70%が水、
トマトやレタスは95%が水・・・。
でも、物質的に水から成り立っているというだけではない。
生命世界は、つねに水のことばに従い、
水を「擬態」しようとしている。
魚のかたちも、私たちのからだも、そうしてできた。
流れや渦といった水の造形を引用しながら、
私たちの心臓や胃腸のかたちが決定されてゆく。
脳だって、キノコ雲などと同じ、水の熱対流のかたち。
へその緒、つむじ・・・。
あらゆる場所に、水の痕跡が残る。